ある日。晴れていた空、なきがら。
帰り道。歩道の、点字ブロックの上に、なにやらふわふわした白いものが落ちていた。
自転車を降りて近づいてみると、それは柔らかい羽毛に覆われた鳥の腹部で、つまり、死体だった。
腐敗はあまりひどくないようだったし、体に目立った汚れもない。きれいな死体だったけれど、大きく欠けているものがあった。
首が無い。
ぐるりと抉られたようなその傷口から、乾いた肉が見えている。周囲の地面に血の流れた跡は無く、羽の一部が少し赤く染まっているくらいだった。
(前にもこういうなきがらを、近くで見つけたことがある。鳥の種類も同じだ。何が起きているのだろう。)
往来の邪魔になるといけないと思って、道の端に寄せておいた。
あいにく今はハサミもビニール袋も持っていないから、後で、取りに来よう。少し大きいから、翼だけを切り取って、標本に一一一
そんなことを考えていると、不意に声をかけられた。
大丈夫ですか、と尋ねてくる、どこか知らない高校の制服を来た女の子二人。死体を見ると、「かわいそう...さっき、車でここを通って、なにか死んでるとは思ったんだ」と、一方が呟いた。
二人が手を合わせて小さく頭を下げていた。「埋めるべきかな?」とも言っていた。
私は彼女らにひとこと挨拶して、その場を立ち去った。
自転車を漕ぎながら、私は、少し前にいたちの死体を見つけた時のことを思い出した。
あのとき、通り過ぎて行く高校生たちから聞こえてきた、声。「キモっ」その言葉が指していたのが、いたちか、私か、分からない。
あのとき、私は、一緒に弔ってほしかった。そのことに今日、気付いた。
二人の女の子たちがしたことに、少し泣いた。
私はきっと、あの死体を取りに戻ることはないだろう。